Visual C++ 2010 Express プログラミング入門

太田研究室 | 電気電子システム学科 | 岡山理科大学

はじめに

ここでは、「Microsoft Visual C++ 2010 Express」を使ったC言語プログラミングの学習方法について説明します。
C言語または C++のプログラミング初心者・入門者向けの解説です。
「Microsoft Visual C++ 2010 Express」のインストール方法については、 こちらをご覧ください

もくじ

Windows アプリケーションとコンソールアプリケーション

Windows アプリケーション

コンソールアプリケーション

Visual C++ 2010 Express で作れるプログラムには、「Windows アプリケーション」と「コンソールアプリケーション」とがあります。

Windows アプリケーションは、普通によくある形のソフトウェアで、主にマウスで操作をするタイプです。 ソフトウェアの利用者にとっては使い方がわかりやすくて便利なのですが、このプログラムを作るのは入門者には難しいです。

コンソールアプリケーションは、黒地のウィンドウの中に文字だけが表示されるもので、 キーボードを使って操作をするタイプです。 見た目は非常にシンプルですが、その分プログラミングが簡単ですので入門者向きです。 また、C言語や C++の教科書などに書かれているプログラムを動かすには、コンソールアプリケーションがベストです。

このプログラミング入門では、コンソールアプリケーションの作り方を説明します。

プロジェクトの構成

アプリケーションソフト(実行ファイル)を作るには、ソースファイル、ヘッダーファイル、リソースファイルなどが必要になります。 (必ずしも全部必要というわけではないです。)
Visual C++ 2010 では、これらのファイルを「プロジェクト」という単位で管理します。 また、いくつかのプロジェクトをまとめて「ソリューション」という単位で管理します。
そのため、Visual C++ 2010 でプログラムを作るときは、はじめにソリューションとプロジェクトを作成し、 次に、プロジェクトの中にソースファイルなどを作っていくという手順になります。

ソースファイル、ヘッダーファイル、リソースファイルなどから実行ファイルを作成することを「ビルドする」と言います。 作成される実行ファイルは、一つのプロジェクトにつき一つだけです。

Visual C++ 2010 Express の起動と初期設定

1 Visual C++ 2010 Express の起動
Windows の「スタート」ボタンから「Microsoft Visual C++ 2010 Express」を選択します。


2 設定の変更
「ツール」メニューから「設定」→「上級者用の設定」を選択します。
! この操作は次回の起動からは不要です。

「上級者用の設定」では、初期状態の「基本設定」で表示されないコマンド(メニュー項目)が表示されるようになります。 詳細については、「すべてのメニューを表示する」をご覧ください

プロジェクトとソースファイルの作成

1 プロジェクトの新規作成
初めにソリューションとプロジェクトを作成します。
「ファイル」メニューから「新規作成」→「プロジェクト」を選択します。

2 プロジェクトの設定
「新しいプロジェクト」ウィンドウが表示されます。
「インストールされたテンプレート」で「Win32 コンソール アプリケーション」をクリックします。 次に、これから作るプロジェクトの名前を決めて「名前」のところに入力します。 右の例では「Hello」としています。 名前は何でも構いませんが、全角文字(漢字・ひらがな・カタカナなど)は使わないほうがよいでしょう。

「ソリューション名」には、プロジェクトの名前と同じものが自動的に入ります。 ソリューション名を変える必要が特になければこのままにしておきます。

「OK」をクリックします。

3 アプリケーションウィザード
「Win32 アプリケーションウィザード」が表示されます。
「次へ」をクリックします。


4 アプリケーションの設定
「追加のオプション」のところの「空のプロジェクト」にチェックを入れます。
「完了」をクリックします。

! Visual C++ 初心者の方は、プログラムの構成をシンプルにするために「空のプロジェクト」を選択することをお奨めします。

5 プロジェクトの準備完了
これでプロジェクトの用意ができました。
画面左側にあるソリューションエクスプローラーには、 ソリューション「Hello」とその中にプロジェクト「Hello」があることが表示されています。

つづいて、プロジェクト「Hello」にソースファイルを作成します。

6 新しい項目の追加
「プロジェクト」メニューから「新しい項目の追加」を選択します。

7 ファイル名の設定
「新しい項目の追加」ウィンドウが表示されます。
「インストールされたテンプレート」で「C++ ファイル(.cpp)」をクリックします。
次にファイル名を決めて「名前」のところに入力します。 この例では「Hello」としています。 このように、通常はプロジェクト名と同じ名前にしておけばよいです。 なお、実際に作成されるファイルの名前には C++ファイルを意味する拡張子「.cpp」が自動的に付けられます。

「追加」をクリックします。

! C++はC言語の上位互換(C言語の文法がすべて使える)であるため、C++ファイルにC言語のプログラムを書いても問題ありません。

8 ソースファイルの準備完了
ソリューションエクスプローラーに、ソースファイル「Hello.cpp」がプロジェクト「Hello」の中に作成されたことが表示されます。
また、その右側のテキストエディタにソースファイル「Hello.cpp」の中身が表示されます。 作成したばかりなので中身は何もないです。 ここにプログラムを書いていきます。

プログラムの作成と実行

1 プログラムの入力
ここでは例として、画面に「こんにちは!」と出力するプログラムを作成します。
テキストエディタに、ソースファイル「Hello.cpp」のプログラムを右の図のように入力していきます。
高画質版

2 プログラムの実行の開始
作成したプログラムをビルドして、実行してみます。
「デバッグ」メニューから「デバッグなしで開始」を選択します。

! 「デバッグ開始」の方を選択してもビルドと実行が行われますが、 プログラムが終了するとすぐにコンソールウィンドウが閉じてしまい、実行結果を見る余裕がありません。 「デバッグなしで開始」の方では、プログラムが終了すると一時停止の状態になりますので、実行結果をゆっくりと見ることができます。

3 ビルドの実行
ファイルを保存してからビルドを行います。
「今後このダイアログを表示しない」にチェックを入れておけば、次からは自動的にファイルが保存されてすぐにビルドが実行されます。
「はい」をクリックします。

4 エラーの発生
もし、プログラムに間違いがあってビルドが失敗した場合、エラー通知のウィンドウが表示されます。 エラーが出なかった場合は6へ進んでください。
「今後このダイアログを表示しない」にチェックを入れておけば、次からはすぐに5の状態に移ります。
「いいえ」をクリックします。

5 エラーの修正
画面下の出力パネルにエラーメッセージが、 「ファイル名行番号) : error エラーコード : エラーの説明」の形で表示されています。 このメッセージをダブルクリックすると、該当するプログラムの場所にテキストカーソルが移動しますので、エラーの説明を見て修正してください。 エラー箇所が直前の行にある場合(例えば「;」の書き忘れ)もありますので、注意してください。
右の例では、5行目で「printf」と入力すべきところを「print」と入力してしまったためにエラーが発生しています。

修正が完了したら2へ戻り、再度、ビルドと実行を行います。

6 プログラムの実行
ビルドが完了するとコンソールウィンドウが現れ、そこに実行結果が表示されます。
ウィンドウを閉じるにはキーボードのキー(文字キーのどれか)を押します。

7 終了
Visual C++ 2010 Express を終了するには、「ファイル」メニューから「終了」を選択します。

保存したプロジェクトを開く

以前に保存したプロジェクトを開くにはいくつかの方法があります。

スタートページから開く

スタートページの「最近使ったプロジェクト」の中にあるプロジェクト名をクリックして、 プロジェクトを開きます。

ファイルメニューから開く

「ファイル」メニューから「開く」→「プロジェクト/ソリューション」を選択します。

ソリューションの名前の付いたフォルダを開き、 「ソリューション名.sln」というファイルを開きます。


これらの方法以外にも、「ファイル」メニューの「最近使ったプロジェクト」から選ぶ方法や、 スタートページの「プロジェクトを開く」から開く方法もあります。

プログラムのデバッグ実行

通常、プログラムを実行すると画面に出力された実行結果しか見られませんので、プログラムの実行途中の様子は簡単にはわかりません。 そこで「デバッグ」を利用すると、プログラムを実行しながら命令の実行順序や変数の値の変化などを確認することができるため、エラーを見つけやすくなります。

1 プログラムの入力
ここでは例として、変数 a に 1、変数 b に 2 を代入してから、変数 c に a+b の計算結果を代入して、さらに、変数 c の値を画面に出力するプログラムをデバック実行します。

2 ブレークポイントの設定
デバッグを行う前に、プログラムの実行を一時停止する場所を決めておきます。 この場所をブレークポイントといいます。
ソースプログラムの左端をマウスでクリックすると赤い丸印が付いて、その行がブレークポイントに設定されたことが表されます。
この例では、9行目「c=a+b;」にブレークポイントを設定しています。

! ブレークポイントを解除するには、もう一度同じ場所をクリックします。また、ブレークポイントはいくつでも設定できます。
! プログラムの実行がブレークポイントの場所に到達すると、その行を実行する直前で一時停止します。

3 デバッグ開始
「デバッグ開始」アイコンをクリックします。

4 プログラムの一時停止
プログラムの実行がブレークポイントに到達すると、そこで一時停止します。
ソースプログラムの左端に表れた黄色の矢印は次に実行する行を示しています。 また、「自動変数」ウィンドウで今現在の各変数の値を見ることができます。
この例では、ここまでの実行によって変数 a に 1、変数 b に 2 が設定されています。 変数 c は a+b の値が代入される前ですので今はデタラメな値になっています。

5 ステップオーバー
続けて次の行を実行するには、「ステップオーバー」アイコンをクリックします。

! 「ステップオーバー」の両隣には「ステップイン」と「ステップアウト」のアイコンがあります。 「ステップイン」は、関数の中に入り込んでその先頭行で一時停止します。これに対して、「ステップオーバー」は、関数を実行した後に一時停止します。また、「ステップアウト」は、現在実行中の関数を最後まで実行した後に一時停止します。

6 変数値の変化
c=a+b;」の行が実行され、黄色の矢印が次の行へ移動します。
「自動変数」ウィンドウを見ると、変数 c の値が、a+b の値である 3 に変化したことがわかります。
「ステップオーバー」アイコンをクリックしてさらに続けます。

7 関数の返却値
printf("a+b=%d\n", c);」が実行されると、コンソールウィンドウの方に実行結果が表示されます。
自動変数ウィンドウには、名前「printfが返されました。」(右の図では文字が隠れています)のところに値「6」が表示されています。これはprintf関数の返却値(戻り値)です。
また、変数 a と b が表示されなくなっています。これは、自動変数ウィンドウは現在実行中の行かその直前の行で使用されている変数だけを表示するようになっているからです。 すべての変数を見たいときは、「ローカル」タブをクリックしてローカルウィンドウを表示します。

8 デバッグの終了
デバッグを終了するには「デバッグの停止」アイコンをクリックします。 このままプログラムの最後まで実行させたい場合には「デバック開始」アイコンをクリックします。

! 「デバック開始」アイコンの名前は、デバック中は「続行」に変わっています。

9 ブレークポイントの削除
デバックをやめるときは、ブレークポイントの赤い丸印をクリックしてブレークポイントを削除します。
「デバッグ」メニューから「すべてのブレークポイントの削除」を選択してもよいです。

カスタマイズ

プログラミング学習がやりやすくなる Visual C++ 2010 Express の設定を紹介します。 お好みで設定してください。
この設定変更は Visual C++ 2010 Express の使用中いつでもできます。

すべてのメニューを表示する

初期状態ではいくつかのコマンド(メニュー項目)やアイコンが表示されないようになっています。 プログラムの実行で使用する「デバッグなしで開始」コマンドも表示されません。 そのため、すべてのコマンドが表示されるように設定します。
! Visual C++ 2008 Express Edition と同じメニュー構成にしたい場合も、この設定を行ってください。

「ツール」メニューから「設定」→「上級者用の設定」を選択します。

「基本設定」の場合

「上級者用の設定」の場合

プログラム作成の段階では、「基本設定」と「上級者用の設定」とでは右の図のように違います。

行番号を表示する

プログラムが読みやすくなるように行番号を表示します。

1 オプションの選択
「ツール」メニューからオプションを選択します。

2 行番号の選択
「オプション」ウィンドウが表示されます。
「テキストエディター」→「C/C++」の順にダブルクリックしてリスト項目を表示して、「全般」をクリックします。
次に、「表示」のところの「行番号」にチェックを入れます。
「OK」をクリックします。

プログラムの左側に行番号が表示されます。

「デバッグなしで開始」アイコンを表示する

プログラムを実行するときに「デバッグなしで開始」コマンドを使用しますが、このコマンドをメニューから毎回選ぶの面倒なので、ワンクリックで実行できるようにツールバーにアイコンとして表示させます。
! ショートカットキー Ctrl+F5 を使ってコマンド実行する場合は、当然ながらこの設定は不要です。

1 ツールバーのオプションの表示
標準ツールバーの右端にある「標準ツールバーのオプション」ボタンをクリックします。

2 カスタマイズの選択
「ボタンの追加または削除」→「カスタマイズ」の順にクリックします。

4 アイコンの追加場所の指定
「カスタマイズ」ウィンドウが表示されます。
まず、アイコンを追加する場所を指定します。ここでは、「ソリューション構成」の左隣に追加されるようにするために、「コントロール」のところで「ソリューション構成」をクリックします。
「コマンドの追加」をクリックします。

5 追加コマンドの選択
「コマンドの追加」ウィンドウが表示されます。
「カテゴリ」で「デバッグ」をクリックしてから、「コマンド」で「デバッグなしで開始」をクリックします。
「OK」をクリックします。

6 追加の完了
「デバッグなしで開始」が「開始/継続」と「ソリューション構成」との間に追加されています。
「閉じる」をクリックします。

標準ツールバーに「デバッグなしで開始」が追加されています。

ツールバーに表示したいコマンドが他にあれば、同じように追加してください。

ウィンドウのレイアウトを初期状態に戻す

ウィンドウの配置場所がおかしくなったりウィンドウが消えてしまったりしたときに、ウィンドウのレイアウトを初期状態に戻す方法です。

1 ウィンドウのレイアウトのリセット
「ウィンドウ」メニューから「ウィンドウレイアウトのリセット」を選択します。

2 ウィンドウのレイアウトのリセット
「環境の既定のウィンドウレイアウトを復元しますか?」と表示されるので、「はい」をクリックします。

ウィンドウレイアウトが初期状態に戻ります。

©2010 OHTA Hiroshi@Okayama University of Science